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スポーツマネジメントの専門家、萩原悟一先生に聞いた家族の絆を強化しながら自己肯定感の高い子を育てる子育ての秘訣

一筋縄ではいっていないおもしろい人生を歩んでいる方をゲスト迎え、様々な生き方を学び、一緒に感動するオンライン講座!!

第2弾のゲストは、元海上自衛官でありながら、本場アメリカでスポーツマネジメントを叩き込まれ日本の学生スポーツ界に新たな風を吹かせまくっている萩原悟一さんをゲストに迎え家族の絆を強化しながら自己肯定感の高い子を育てる子育ての秘訣を伺いました。

1, スポーツマネジメントってなに?

バスケットボールの試合
<スポーツマネジメント>は日本では聞きなれない言葉ですが、「目的達成のためにチームを作り、どのようにすれば効率的に目的を達成できるか?」ということを科学的に考える学問のことです。

スポーツ大国アメリカではメジャーな考え方ですが、スポーツの地位が低い日本ではまだまだ一般的な考え方ではありません。

今回、悟一先生は病院を例に<マネジメント>という概念を説明してくださいました。多くのけが人や病人を救うにはどうしたらいいでしょう?病院を作ったり、チームを作ったりすることで、多くの人を巻き込み医療活動をするのがよいですね。そのチームのリーダーは必ずしもお医者さんでなくてもいいのです。

「どうやったら多くの人を救えるか?」ということを考えられる人がリーダーになり、お医者さんを必要な場所に配置して多くの人を助ける。これがマネジメントという考え方に基づいた行動です。

スポーツマネジメントにおけるリーダーの役割というのは、直接教えるのではなく強いチームを作るために必要なコーチや人材を発掘して、連れてくるのがお仕事なのです。

2, 荻原先生の経歴

インタビューを受ける悟一先生
ここで講師の悟一先生の破天荒な経歴を紹介します。

1984年東京都文京区生まれ。自衛官を志し、防衛大学校人間文化学科で学び、海上自衛隊に入隊するも心の声に従い退職。

その後、株式会社グッドウィル・グループを経て、カリフォルニア留学(水泳コーチ)。留学中にであったNBAのスポーツエンターテイメントのとしてのすばらしさに衝撃をうけ、本格的にスポーツマネジメントを学ぶためにアメリカのアーカンソー州立大学大学院に進学する。

帰国後、プロバスケットボールチームでのインターンを経て、大学教員の道へ。
九州工業大学研究員(及び同大学で生命体工学研究科脳情報専攻し博士取得)日本経済大学講師、鹿屋体育大学准教授を経て、現在は九州産業大学准教授として教鞭をとりながら自身の学びを深めるために東京大学大学院に在籍中。

九州産業大学人間科学部准教授、株式会社リトルソフトウェア執行役員、一般社団法人日本運動・スポーツ科学学会理事、一般社団法人 大学スポーツ協会(UNIVAS)総合推進委員を兼任して大学にとどまらず活動の域を広げている。

キャリア31年の水泳は大学での授業を担当しながら自身も泳ぎ続けている。第22回フィンスイミング日本選手権 優勝。第3回フィンスイミング日本学生選手権 優勝。競泳全国大会出場(小学生から大学まで)の経歴を持つ。

学生時代に在籍していた東京スイミングには2つ上に北島康介選手、同じ学年にメダリストの松田丈志選手がいる。

3, 決意の渡米

アメリカのバスケチームでのインターン時代の悟一先生
自衛官を退職して働きだしたグッドウィルグループでしたが、入社間もなく経営不振により会社業務の停止に追い込まれます。24歳でニートになった悟一先生がアメリカ行きを決意した出来事についてお話を聞きました。

自分の強み弱みの徹底的に分析

仕事を無くして実家に帰った悟一先生。まず取りかかったのは自分自身を徹底的に分析することでした。強み弱みを洗い出し、自分とはどんな人間なのか客観的に見ることから始めました。

防衛大学校という経歴に加え、強みは体力と根性がある。そして水泳が得意。弱みは英語ができない。勉強に苦手意識があること。ここで明らかになった強みが運命の糸を引き寄せたのです。

運命の再会

メールをチェックする男性
強みである体力、水泳を活かせる道はないのかと模索していた悟一先生。高校時代にカリフォルニアの競泳の大会に出た際にお世話になった人物に連絡をとりました。すると返ってきたのは英語の長文メールだったのです。

奮起した英語長文のメール

ずらっと並びに並んだ英文。そして最後に「この内容が理解できなかったら、これからの世の中であなたは使い物になりません。何を迷っているのですか?早くこっちにきなさい。」ということが書かれていました。

その時、こみ上げてくる悔しさとともに確固たる決意が悟一先生の中に生まれました。大好きな水泳がつないでくれたご縁でした。

英語ができない…けどアメリカへ行く

涼しげに輝くスイミングプール
悔しい、悔しい、悔しい!!
翻訳機を使って必死になって返事を書き、英語に苦手意識を持ったまま渡米を決意しました。メールをもらって2か月後、悟一先生はアメリカのプールサイドに立っていました。

コーチ見習いとして先輩コーチのもとで10か月の実務経験を積んだ後、帰国するつもりだったのですが悟一先生。しかし運命の女神はここでも悟一先生に素晴らしいギフトを用意していたのでした。

理論的に学ぶ機会

勉強中にノートを書いているところ
実務経験を積み、このまま帰国する旨を伝えた悟一先生でしたが、コーチからは予想外の提案がありました。

「このまま帰国するのでは実務経験が活きてこない。大学院に進学して理論的にスポーツマネジメントを学びなさい。」その言葉にアメリカに残ることを決意。アーカンソー州立大学で2年間スポーツマネジメントの理論を徹底的に学んだのでした。この学びがのちに悟一先生の活動を大きくサポートする重要な経験になったのです。

4, 家庭でできるスポーツマネジメント

理論的に正しくても家庭で実践できない理論では本物とはいいがたいと悟一さんは言います。スポーツマネジメントという考え方を家庭で実践するにはどのような考え方が必要なのか伺いました。その答えこそが、家族の絆を強化しながら自己肯定感の高い子を育てる子育ての秘訣です!!

① 家庭をチームと考える

家族に見守られる女の子
家族を1つのチームと考えます。

例えば両親とお子さん3人のご家族だとしましょう。弟が勉強でよい成績をとりたいといったときに、家族みんなでどうやったら彼の目標達成をサポートできるか考えるのです。

お姉ちゃんは弟が勉強している間、赤ちゃんと遊ぶということで弟をサポート。
お父さんはわからないところを教えることで、お母さんは健康管理をすることで彼をサポートします。

そして目的が達成出来たら家族みんなでご褒美を満喫する。

弟に限らず、お姉ちゃんの目標、お父さん&お母さんの目標達成においても同じように家族で協力し合うのです。これが家族を1つのチームとして考えるという具体的な方法です。

② 役割を与える

ハートを持ち家族に見守られる女の子
家族を1つのチームと見た時に、チームを構成しているメンバー1人1人に役割を与えることで自己肯定感を高めながら、責任を果たしていく環境を整えます。

人間は役割を与えられることで必要とされていることを認識します。結果的にそれが自己肯定感のアップにつながるのです。

また個人ではなく家族というチームで考えることで、責任と役割は適度に分散され、1人への負担(物理的にも精神的にも)が軽減されるというメリットもあります。

③ アウトプットが自己肯定感をアップさせる

お母さんとおでこを合わせ微笑む女の子
子供は日々の生活の中で凄まじい情報をインプットしています。

しかし重要なのはインプットだけでなくアウトプットさせること。アウトプットは本人の理解を深めるというメリットだけでなく、自己肯定感をアップさせるという効果もあるのです。

具体的には子どもに話す機会を与えること。必要なアウトプットができれば子供はとても落ち着きます。

④ 共通の目的がディスカッションをうむ

仲良く見つめ合う夫婦
家族をチームと考えた時にはずせないのが<対話>です。特にチームで重要な地位を占めるお父さんとお母さんは目標達成に向けて緊密に意見を交わす必要があるでしょう。ここで忘れてはいけないのが、共通の目標。家族としてどこに向かうのか。ここ抜きの対話はお互いの主張の言い合い(喧嘩)になっていまいます。

しかし、共通の目標をしっかり認識していればディスカッション(有益な対話)ができるのです。

夫婦の対話がない、もしくは上手くいっていない場合は<共通の目標>がしっかりあるか再度確認してみるのがいいでしょう。もしかしたら同じ目標が見えていないという場合もあるのです。

⑤ 自分で決めて自分で実行する

自分で勉強する子供
ついつい「勉強しなさい」「宿題やったの?」と聞きたくなってしまうのが親心ですが悟一先生のご家庭ではそんな言葉がけはしないそうです。

まずは、子供自身でなにをするか決めさせる。もちろん決定するにあたって親がサポートをします。しかし、決まってからはすべて自己責任で実行させます。

お子さんのスイミングへの送り迎えは悟一先生が行っているそうですが、約束の時間までに準備ができなければ、その後どんなに行きたいといっても絶対にプールへは連れて行かないそうです。習い事の宿題もやらいのであれば、「先生に怒られておいで」とその責任は子供自身が引き受けるような環境を作ります。

親が手をだせば子供は嫌な思いをせずに済む場面は多々あります。しかしその状況を最後まで子供自身が引き受けるところまでが本当の意味での自己責任です。それを手も口も出さずに見守るというのは…子どもを信頼していなければ絶対にできない行動です。

5, 夏休みこそマネジメント力をフル活用する

そろそろ始まる夏休みに向けてスポーツマネジメントの活用方法を伺いました。上記の5項目を夏休み期間にどんなふうに活用できるかの具体的なアドバイスです。

職場体験で家族の働き方を理解する

デスクに置かれたパソコンとノートと白い花
40日間、お母さんと子どもの時間が多くなる夏休み。ずっと同じ相手、同じ家にいてはお互いに煮詰まることもあります。こんな時はおじいちゃん、おばあちゃん、お父さんの職場にお邪魔して職場体験をしてみてはいかがでしょうか?

お仕事によってはお子さんが入れない職場もあるかも知れませんが、普段家では見ることのできない両親の姿を目にすることで家族への理解が進みきずなが深まること間違いなしです。

家族をまきこんだ計画を立てる

おじいちゃんおばあちゃんと一緒にソファーでほほ笑む女の子
日中、お子さんと過ごすのはお母さんがメインですが、お父さんやおじいちゃん、おばあちゃんも巻き込んで計画を立てるよう心がけましょう。

おじいちゃん、おばあちゃんの家に行ってお話をすることで子供は普段とは違ったアウトプットを経験できます。遠方に住んでいてなかなか会いに行けない方は携帯の無料通話サービスを活用してみましょう。アウトプットの先は必ずしもお父さんお母さんでなくてもよいのです。

お父さんが普段忙しくお仕事をしているからこそお父さんもチームに巻き込みましょう。物理的にサポートができなくても、共通の目標に向かってできることはたくさんあります。

<家庭は最高の実践の場>と悟一先生は言います。家庭でできないことは外の社会は絶対できない。だからこそ家庭という場所を大切にしていただきたいのです。

6, 参加者からの質問事項

今回は小学生と中学生とその保護者の方々のご参加をいただき、悟一先生には具体的な質問に答えていただきました。その質問と先生の解答を紹介します。

水泳ができません。どうしたらいいですか?

プールサイド
まずはビート板を使用したバタ足からスタートしましょう。いきなり25m泳ごうとするのではなく段階的に距離を伸ばしていきます。

キックは大きくばちゃばちゃするのではなく足一足分の幅(約25センチ)で行います。

水泳のコツは力みすぎない事。力を抜くことで浮力が生まれ楽に泳げます。

家庭において子どもをサポートしやすい体制を作るにはどうしたらいいですか?

お母さんと相談をしている女の子
子供の目標達成を家族というチームで考えた時、やりやすい環境を作るにはルーティーンを作るということが重要です。子供はその時の気持ちで行動を変えます。子供にとって見通しを立てて計画をたてるということはなかなか難しいことなのです。だからこそ、見通しのきく大人がルーティンをつくってあげるということが重要です。

サッカーが上手くなりたいです。どうしたらいいですか?

青い芝生に転がるサッカーボール
まずは人の話を聞くこと。覚えたことをお姉ちゃんやお母さんに教えてあげるとうまくなりますよ。

やりたいことがありすぎて困っています。

やりましょう!!やっていくうちに、すごく好きというものとそうでないものが出てくると思います。そうしたらその時、本当にやりたいものはどれなのか自分に聞いて、続けるかやめるか決めていいと思います。やりたいことがたくさんあることは素晴らしいことです。

7, 悟一先生の夢と目標

新緑の森の中のイメージ
悟一先生のこれからの夢について伺いました。

スポーツでみんなを笑顔に!

スポーツマネジメントの専門家としてみんなを笑顔にすることが目標という悟一先生。理論的に学んだ人間がフロントランナーとして日本の学生スポーツ界を牽引することでスポーツの地位向上を目指したいと考えているそうです。

子供の夢実現をサポート、笑顔いっぱいの家族

夢は自分の子供3人がそれぞれの夢に向かって楽しく笑顔で生きていくことをサポートすること。これは絶対かなえたい夢だと熱く語ってくれました。

90歳で水泳世界チャンピオンになる

スイム練習中の悟一さん
キャリア31年の水泳は実は悟一さんにとって未だ達成感がない競技なんだとか。達成感がないとは意外なお言葉でしたが、まだ夢の途中ということでしょう。

今でも泳ぎ続ける理由は、おじいちゃんの世界チャンピオンを目指しているから。まずは5年後のマスターズにむけて身体作りを進めているそうです。最終目標は90歳の世界チャンピオンです。

8, 子供たちへのメッセージ

両手に希望の光を抱く女性
最後に悟一先生から子供たちにメッセージをいただきました。

勉強しよう!

スポーツは体型や生まれ持った能力によってできること、できないことがあります。悟一先生自身もスイマーとしては身長が低く、悔しい思いをしてきました。

しかし勉強はやったらやった分だけ結果が出ます。スポーツより簡単で確実なのが勉強。何のために学ぶのか目的をもって取り組むことが勉強を楽しくする秘訣です。

頑張らずに、まずはやってみよう

草原で昆虫採集に夢中な男の子
気になること、興味があることは遠慮せずにまずやってみよう。頑張らなくてもいいいので、まずはとりくむという姿勢が大事です。

「参加してくれた子はみんなすごい子だよ」と子どもたちにお褒めの言葉をかけてくれた悟一先生。お父さん、お母さんに愛されていることを忘れずに、いろんなことにまずはとりくんでみてねと優しい言葉で締めくくっていただきました。

最後に

悟一さんと梶田
今回は新しい分野であるスポーツマネジメントを家庭で実践する具体的な方法をその専門家である萩原悟一先生に伺いました。子育てをしている3児の父である悟一先生だからこそできるアドバイスがたくさんあり、今すぐに実行していこうとという気持ちになれた会でした。

お話の中で「家庭でできないことは絶対、外(社会)でできないし、それは本物ではない」という言葉が深く胸に刺さりました。すべての活動の基盤は家庭であり、家庭の充実なしに大きな仕事はなしえないと改めて気づかされました。

人生にはたくさんの岐路があります。

そこに立った時に自分の心の声に従うことは時として困難を極めることでしょう。悟一先生自身も必死で悩み考え決断してきたからこそ、ご縁がつながりチャンスが訪れ、活躍の場が開かれたんだと思います。子供たちへ向けてのお話でしたが、私自身の生き方を問い直す良い機会となりました。

私たちの子供が学業やスポーツで活躍する頃には悟一先生のもとで学んだ先生が活躍している頃でしょう。勉強も運動もあきらめない生き方が普通の社会になっているかもしれません。

今はまだスポーツの地位が低い日本ですが、今日のお話をきくことができた私たちが「どっちもできるよ」という考えを持ち、家族というチームでささえながら子育てをすることで子供の可能性を伸ばしていけたら嬉しいです。

最後に今回、お忙しいお仕事の合間をぬって、笑顔でインタビューを引き受けてくださった萩原悟一先生、そしてオンラインインタビューにご参加いただいた参加者の皆様、感動のひと時を一緒に過ごすことができ本当に楽しかったです。ありがとうございました。